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文化とは自ら働きかけること
01.07.2011 (Fri) vol.2

今夜は長らく改修工事中だったNAiのリニューアルオープニング。その記念イベントとして中国とオランダの都市に関するシンポジウムが開催された。OMA香港のパートナー、デイヴィッド・ジャーノッテン(David Gianotten)のレクチャをはじめ建築都市関連のレクチャとディスカッションが行われた。

デイヴィッドは 西九龍文化地区マスタープランコンペ案のプレゼンテーションを行った。長いコンペの審査プロセスの結果、最終的にはフォスター案が採用案となったが、そんな状況の中、OMAが何を考えコンペに取り組み、彼が香港オフィスをどのように運営してきたかという立ち位置が鮮明に語られたのが印象的だった。

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このコンペは香港オフィスを本格的に始動するきっかけともなったものだった。コンペの最大の目的は、経済原理や市民への迎合だけに留まらない本当のカルチャーを香港に浸透させることだったという。そのためにOMAが選んだ戦略はコンペを勝ちに行くこと以上に、香港市民に多様な意味でショックを与えるということだった。

コンペの初期に、多くの有識者、市民へのリサーチを行った。その結果、単にコンペに勝つことが目的ならば大きな緑の公園を作ることで都市のシンボルを与え、必要なプログラムは経済的なビルティングタイプを踏襲して公園に邪魔しない様配置すれば良いことは明らかだったという。しかしそれは本来の意味での「文化地区」を生むことができるのか?とクリティカルに問い掛ける。そしてOMAは「文化とは自ら働きかけることであり、単なる消費ではない」という答えを出す。

コンペの審査プロセスで何百回ものプレゼンテーションが開催され多くの市民から賛否両論、多様な意見が生まれた。そしてその中からは、これまで気がつかなかった現状への疑問を持つ者、そしてOMAが香港で起こそうとしている「消費では無い文化」の重要性に賛同する者も現れた。さらにはそれが元となり新しい仕事への芽生えになったケースさえも生まれた。

このコンペは、香港の西九龍地区に文化地区を作るという課題だった。しかしOMAは西九龍地区だけにとどまらず、香港全体規模で文化というものを考えるきっかけを生んだ。そのことが何よりも価値があるとデイヴィッドは結んだ。

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現状、特に都市に対する分析。そしてそれに対する自らの立ち位置の明示。その立ち位置をデザインを通じてビジュアライズすること。OMAの典型的とも言えるプロジェクトの組み立てが鮮明に浮かび上がる。マスタープランのような複雑なテーマでも端的な言葉を持って語られる点はやはり魅力的だ。

「文化とは自ら働きかけることであり、単なる消費ではない」

OMAはそう言う。香港に置いてそれが本当なのかどうかは誰にも判らない。誰かがそう保証してくれる訳ではない。だけどそれを信じこれから生まれる未来に保証人を求める続ける。そんな態度そのものが文化をつくるということなのだ。


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Top▲ | by takeshimurakuni | 2011-07-07 10:10

ロッテルダムの設計事務所OMAで建築・都市について考える。「人生の夏休み」、「35歳のインターン」の続編です
by takeshimurakuni

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