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51N4E : 三人のブリコルール
24.06.2011 (Fri)- 25.06.2011 (Sat)

今週末にオフィスを去る二人のためのパーティが開催された。夕方から多くの人がビールやシャンパンを飲みはじめた金曜。雨が降ったり雷が鳴ったり不安定な天気の中タイミングを見計らってオフィスを去りバーへ向う。翌日、土曜も荒れ模様。蒸し暑く雷があちこちで光る。

*  *  *

そんな中先週ブリュッセルに出かけた際に見たもう一つのブリュッセルの建築家51N4Eのエキシビションについて考えている。

力が抜けている雰囲気が多いに伝わってくるものだった。その力の抜け具合とは乱暴に言うと近代建築の雰囲気と違うものだと言える。建築の理論を掲げてプロジェクトを展開するというものとも違うし、エンジニアリングの結晶として出来上がるものでも無い。スタイルの先端を追い求めている眩しさや華々しさがあるわけでも無い。だけど、それは決して漠然と設計を行っている訳では無く、間違い無く建築家のある情熱に基づいて生み出された作品達なのだ。

その違いを生み出しているヒントは設計プロセスにあるのではないだろうかと考えている。彼らの設計プロセスはとてもブリコラージュ的なのだと思う。

それはゼロから完成までひとりの大建築家が全プロセスまとめきるというスタイルの対局に位置するものである。明確なゴールがありそこに向うために、人員、時間等可能な限りのマンパワーをかき集めてプロジェクトをまとめるという作業は、ブルドーザーによる自然破壊のような力業であり近代的な姿である。その近代的な力強さが51N4Eからは感じられない。それは良いことなのか悪いことなのかわからないがともかくその点が違う。そしてその違いがブリコラージュ的だと感じるポイントになっている。詳しいオフィス内での仕事の仕方は確かではないがエキシビションからもその断片を伺い知ることができる。

例えば、
模型の作りかたにしてもさまざな表現方法がかき集められる。アクリルで出来た質感を持つもの、シャープでエッジの効いたもの、ダンボールで出来たラフで抽象的なものまで。システマティックにフォーマットを揃えてずべての統合を図るというやり方を採用せず、各プロジェクトの置かれた状況下から生まれ出るアウトプットをそのまま集めて束ね展示している。

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また、
図面やスケッチの展示の仕方にしてもどこからどこまでがひとつのプロジェクトなのかが曖昧になったものが多い。エキシビションのために完結したドローイングをつくるというよりもプロセスの中で生まれたスケッチ、構造計算、コラージュ、そしてCAD図などがヒエラルキー無くフラットに置かれる。全てがそうかといえばそうでもなく、決めのドローイング一枚で表現させるプロジェクトもありそれぞれのプロジェクトに備わっている既にある差異が露出する。

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*  *  *

ブリコラージュをする職人などの人物は「ブリコルール」と呼ばれるらしい。51N4Eの三人はブリコルールとしての建築家と言えるかもしれない。彼ら三人の周りでは日々オフィスのスタッフも含め、構造エンジニア、家具、グラフィック、模型のコラボレーター達の設計活動が繰り広げられる。それを彼ら三人が組み合わせ、束ね、意味を付く加え建築にする。

展覧会のタイトルは "DOUBLE OR NOTHING"である。何かと何かが組み合わされ重なることで初めて建築が生まれるさもなければ何も無しと彼らは言う。それは正しくブリコラージュ的なものの見方である。

建築家の新しい姿とは、もはや全知全能の神のような存在にあるのでは無い。この「ブリコルール」という人物像にもしかしたらヒントがあるのではないか、と雷が鳴り響く小さな部屋の中考えている。

Freek Persyn
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Johan Anrys
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Peter Swinnen
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Top▲ | by takeshimurakuni | 2011-07-05 03:49

ロッテルダムの設計事務所OMAで建築・都市について考える。「人生の夏休み」、「35歳のインターン」の続編です
by takeshimurakuni

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