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ぬるさに学ぶ姿勢
18.06.201 (Sat)

アムスフォート(Amersfoort)というこじんまりとしたオランダの町に出かけた。目的は現在開催中の 'Meissen | SO - IL' と題されたエキシビションを見るため。SO-ILという名のニューヨークで活躍する若手建築家ユニットとドイツの高級陶磁器マイセンのコラボレーション。SO-ILがデザインを出掛けた美しいカラフルなディスプレイにマイセンの陶磁器が展示されている。別のフロアではSO-ILがこれまで手がけてきた建築プロジェクトが模型やパネルとともに展示されている。建築家の作品展と、展示空間という実作が同時に楽しめるリッチな企画だった。

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SO-ILはオランダ人男性Florian Idenburgと中国系女性Jing Liuの建築家ユニット。Florian は日本の設計事務所SANAAにて8年間経験を積んでいる。SANAAでは担当者としてニューヨークのニュー・ミュージアムなどを手がけた後、2008年にJingと共にニューヨークにて独立を果たす。彼らの作品には良くも悪くもSANAAの影響が色濃い。そしてそれと同時に、独特の色彩感覚やマテリアリティが彼らのオリジナリティとして付け加えられている。その融合の葛藤を作品の中に見て取れるのが良い。

SANNA独特のシャモジのような輪郭線を描きながらつけたされた増築部。そこに彼らのテイストがトッピングされる。スムーズなカーブではなくギザギザが付き、高透過ガラスの替りに色付きや鏡面のガラスがはめ込まれる。
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SANNAおなじみの独立して並ぶ立方体群としての住宅。しかしその壁には石が積まれている。スタディの過程では木を貼る案など他の材料もテストされている。いずれにしてもあくまでも白ではなく素材感。
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偉大な師の元で長い間学び多くのことを吸収し巣立つ。その際若い建築家が取りうる進路は二つあると思う。師が志したことを徹底的に突き進める方法と、師の中に見つけた同意できるテイストとそれとは異なる自分自身のテイストの融合を試みるという方法だ。SANNAを例に取れば、石上純也が前者でSO-ILが後者になる。

師の偉大さを拡張し続ける原理主義者として石上純也は評価される。だけど、SO-ILのように自分の中にある師とは異なる何かと、師から学んだ大きな影響の間を葛藤しながら揺れ動く建築家像に僕はとても共感を覚えた。

大多数の建築家、建築を学ぶ者が本当に見習わなければならない姿勢というのは、単にわかり易く取り上げられやすい極度な温度の中にあるのでは無いと思う。このエキシビションで見たSO-ILの複雑に揺れ動くぬるさの中にこそそれはあるのではないだろうか。
Top▲ | by takeshimurakuni | 2011-06-26 03:48

ロッテルダムの設計事務所OMAで建築・都市について考える。「人生の夏休み」、「35歳のインターン」の続編です
by takeshimurakuni

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